前の節では説明の簡略化のために Taylor 展開を有限個の項で打ち切ることで関数近似を導出したが、Taylor 展開を用いるには
Taylor 級数がもとの関数f(x)に一致する
といった比較的厳しい条件を満たす必要があり、また近似した関数のもとの関数からの誤差を評価するのが難しくなる。
実際に理論的に解析するには、より緩い条件で成り立つ Taylor の定理を用いる。Taylor の定理は、整数n(n≥1)をとったとき、n階微分可能な関数f:R→Rに対して、次の性質
f(x)=f(x)+dxdf(x)Δx+21dx2d2f(x)Δx2+⋯+n!1dxndnf(x)Δxn+hn(Δx)Δxn(Δx→0limhn(Δx)=0)(2.1) を満たす関数hn:R→Rが存在するという主張である。
(2.1) 式からhn(Δx)Δxnの項を取り除くと前節で定義した (1.1.2) 式による関数のn次近似と一致している。すなわち
f(x)−fn(x)=hn(Δx)Δxn が成り立つので、hn(Δx)Δxnは近似誤差を表しているとみなせる。この近似誤差はランダウの記号を用いれば
hn(Δx)Δxn=o(∣Δx∣n)(2.2) と書けるから、関数の1次近似と2次近似について
が成り立つ。
が成り立つ。近似誤差は
である。