詳説
『Optimization Algorithms on Matrix Manifold』の話を理解するには情報系の学生が通常履修する数学の知識では不足している。そしてこの不足を補うまとまった資料は日本語英語問わずほぼ存在しない。本書の存在意義はその知識を補間することにある。より深く勉強したい人のために参考文献も示す。
『Optimization Algorithms on Matrix Manifold』では多様体の説明をするために位相空間論の言葉が多々登場する。深入りする必要はないのだが、最低限の知識がないと出鼻を挫かれるので Riemannian 最適化と絡めつつ大まかに解説する。
また Riemann 多様体についての議論を理解するには線形代数と解析学の知識を統合してテンソル解析の段階まで理解を深めなければならない。読者の知識や理解の度合いはその背景により様々であろうから、テンソル解析を理解するために必要な線形代数と解析学の知識を整理する。
この時点で多様体論を理解する下地が整うので本題へと入っていく。Riemannian 最適化で用いる多様体の知識は主に解析幾何学と呼ばれる領域になる。Riemann 多様体も解析幾何学で考察される対象だが、話が高度になって説明が長くなるのでトピックを分けた。
これからいろいろと説明していくことになるが、それらはすべて
座標変換によって様々な量がどう変化するか
座標変換によって変化しない量(幾何的な対象)はなにか
を理解するための布石になる。多様体は局所的にユークリッド空間とみなせるような位相空間のことだが、局所座標の取り方は座標変換の自由度があって無数に存在するので、座標変換によって変化しないような本質的な対象を用いて理論を展開していかねばならないのである。
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